土地境界をめぐる深すぎる話

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休日出勤したついでに去年の書類を整理していたときのこと。ふとメモ書きが付された測量図面に手を止めました。そこには土地境界をめぐる、深すぎる話が横たわっていたのでした。

話は土地売買にあたって、引渡時に測量を担当した土地家屋調査士さんが、隣地地主が設置したトンブロック積みの境界がややずれているものの「許容範囲」として境界を打ったことに端を発します。

隣地地主は、自分たちも数年前に測量を入れたのだし、そのときの土地家屋調査士はトンブロックがむしろ敷地内側に入っている(当社の顧客が越境している)と説明している……と主張しました。それが事実なら、境界が2種類存在し、それぞれの土地家屋調査士が別々の境界を主張していることになります。

そこで私たちは測量を担当した土地家屋調査士にヒアリングを行いました。

結果、同じくヒアリングをした建築士でさえも「そんな世界があるのか」と驚いた事情が明らかになっていきます。

まず、この土地(名護市の田舎です)の公図の制度は乙一です。乙一の場合、公差は75センチと大きく、本土地(1350㎡ほど)の場合23~24㎡程度の誤差は許容範囲となるのだそうです。

この時点でも驚きを禁じ得ないわけですが、ふたりの土地家屋調査士が採用した基準点もまた大きく異なっています。さきに測量を行った土地家屋調査士(相手方土地家屋調査士)は名護市の古い基準点をもとに測量を行いました。当方が依頼した土地家屋調査士は、世界測地系を採用して測量を行いました。

そのことによってかなり大きな違いが生じる。そしてその違いは許容されるようなのです。

ど、どういうこと? と思いますよね。

国土地理院のページの世界測地系についての説明もよくわかりません。

また、我が国の測地基準点成果は、明治時代の測量機器や測量技術による制約と過去100年間の日本列島の地殻変動の影響等で基準点網にひずみが生じています。例えば、東京から見て札幌の位置が西へ約9m、福岡の位置が南へ約4mずれていることが分かっています。

GPS(全地球測位システム)及びGIS(地理情報システム)というコンピュ-タシステムによる位置情報の測定・利用技術が出現し、今後急速な普及が見込まれています。そして、両技術に対応する基準として、世界測地系に基づいた、高精度な測地基準点成果及び地図成果が求められています。しかも、近い将来に予測されているGPSやGISの本格的普及を考慮すると、それ以前に、世界測地系に移行する必要があります。

(中略)

改正測量法の施行により、地方自治体等が行う測量や、地図・GIS用地図データベースの作成、法令・告示の経度・緯度表示などについては、世界測地系に基づくことになります。また、必要に応じて既存データの変換等が必要となります。

しかし、地方自治体が持っているデータのすべてを一度に改正測量法の施行日に変換しなければならないというものではありません。新たな測量計画や今後とも維持する必要のあるデータ等を考慮して、必要なものを計画的に順次変換すれば良いことになります。

いや、ちょっと待って。世界測地系に即移行しなければ、今回のような問題がまた各地で起きるのではないでしょうか?

不動産屋をやっていて、測量ってよくわからないなぁと思うことはしばしばあるのですが、最も納得のいかなかった話のひとつです。