両手仲介率を公開

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全国の不動産仲介業者の中でも、両手仲介率をあえて公開している事例はあんまりないと思うので、公開してみようと考えました。
2018年4月1日から2019年3月31日までの1年間の取引に関して、不動産取引台帳をもとに計算してみたところ、両手売買率は約35%という数字に。これは業界内でも低い方じゃないかと思います。当社としては、自社営業にも力を入れながら、同時に他社への物件紹介を積極的に行っているので、その結果この数字になったのか、と考えています。

両手仲介についてはいろんな立場の人たちが、割とエビデンスに基づかない事をおっしゃっているので、それについてもちょっとコメントしておきたいと思います。

両手仲介が諸悪の根源的考え方

両手仲介を諸悪の根源と考える方に通底しているのは、両手仲介は双方代理だという考え方です。たとえば以下のような記事。

【両手仲介・双方受託|メカニズム|矛盾発生・利益相反→裏切り】
(https://www.mc-law.jp/kigyohomu/22754/)

両手仲介では、売主と買主双方を担当するため「双方代理なのではないか?」という議論が根強くあります。そこから、両手仲介では問題が生じやすいという結論を下すわけです。たとえば、両手仲介では、売主と買主双方に対して誠実であることは難しいという考え方ですが、はたしてそうでしょうか?

不動産を「より高く売りたい」と思う売主と、「より安く買いたい」と思う買主の要望は相反しているため、これをひとつの不動産会社が同時にかなえることは、構造的に困難です。 (REDS不動産流通システムHPより)

という点について考えてみましょう。
当社で仲介したケースに関しては、両手売買だから安くなったということは特にありません。当社では自社の査定や値付けに割合自信を持っており、あんまり値下げ提案をしないという背景もありますが、全体的に見ても「両手売買だから値下げされるケースが多い」といった言説に対するエビデンスは、今のところないと思います。

両手売買か、片手売買かを論じるのは、おそらく本質的な議論ではありません。不動産仲介業者(の営業マン)がお客様よりも自分たちの利益を優先する理由はそこにあるわけではなく、それぞれの会社の体質にあります。

すなわち、重いノルマを課して高いインセンティブで煽るならば、その会社の営業マンはお客様の利益よりも仲介手数料を最大化することを優先するでしょう。両手売買を禁止したとしても、同じ事がいえるわけで、より本質的な議論をするとすれば、それぞれの会社の営業方針をこそ問うべきでしょう。

両手売買を批判する側の方が怪しい事例も……

ウエブで両手仲介を敵視する記事を読んでいたら、不動産コンサルが自社のサイトに誘導している(しかも結構大手メディアのサイトで)といった事例も見受けられます。何となく悪いイメージがある両手売買を叩いておき、それによって自社の利益を上げていこうという態度は、むしろ「お客様のため」という理想からほど遠い気がします。

別に両手でもいい、そして片手でもいい! という、ヘンに偏らない姿勢で、なおかつお客様とのコミュニケーションをしっかりととる姿勢がベストでしょう。少なくとも、当社は両手にも片手にもこだわりません。

さて、片手仲介を我々は共同仲介と読んでいます。
他社と共同して仲介業務を行うと、次からはその会社とさらに円滑に業務をこなしていくことができます。一度共同仲介を経験した会社からは、いろんな物件を紹介してもらえますし、それによって自社の顧客に提案できる物件数もどんどん増えていきます。

一方、両手仲介のメリットもあります。売主様とコミュニケーションのとれている物元業者はその物件に詳しいため、買主様にも的確なアドバイスができます。たとえば、建物の利用履歴なども把握していますから、リフォームをお考えの場合に有益な情報を提供できますし、買主様のライフスタイルにその物件が適しているかの判断も、最も的確です。

両手仲介の善し悪しを断定的に論じるのは、少なくとも現行の宅地建物取引業法下では無意味だと思います。