原野商法の被害土地は売れるの?

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「原野商法の二次被害」に関するエントリーを沖縄かりゆし不動産ホームページに掲載したついでに、こちらでは原野商法の被害土地を売却した事例をご紹介します。利用価値の低い土地であっても、その価値の範囲内であれば売れるケースもあります。

原野商法とは?

独立行政法人国民生活センターの小冊子によると、「原野商法とは、将来の値上がりの見込みがほとんどないような原野や山林などの土地を、値上がりするかのように偽って販売する手口であり、1970年代から 1980年代にかけて社会問題になった。」と解説されています。

そのような原野商法の舞台は、沖縄県内にも複数あるようです。当時有名だった芸能人が広告塔として利用される例や、ひどい場合には有名芸能人自身が主体的に原野商法を行った事例も。どうも、県内外の有名人が一枚噛んでいる事例があるようです。

どのような事例があったか

当社で取り扱った事例は3カ所(今帰仁村諸志、名護市字屋我、名護市字天仁屋)ですが、その中でも典型的な事例をご紹介します。

場所は名護市字天仁屋。天仁屋区は人口118人、66世帯の小さな字ですが、物件所在地は集落から2キロ近く離れた場所です。航空写真付きの地積併合図を取り寄せると、手つかずの原野を分筆して、図面上は分譲地に見えるような体裁になっていました(上記写真)。

登記簿によると昭和50年8月に、所有者の母親が購入。地目は山林で、面積は1504㎡(約405坪)。抵当権等は付着していなかったので、当時の価格を推測する手がかりはありません。物件調査を行うと、水道本管までの距離が約2km、既存の沖縄電力の電柱まで1kmと、インフラの整備が絶望的。また、建築基準法上の道路に接しておらず、前面の道路は非道路の里道でした。したがって、建築できません。

本土地は弊社に直接売却依頼が来た物件ではなく、関東の業者さんからのご相談で取り扱うことになったものです。その業者さんと相談の上、価格を坪単価約3000円に設定しました。これは、沖縄本島で市場に流通する土地としては最低ラインです(これ以下の取引もありますが、正常な流通に乗っていない場合がほとんどです)。これくらいの価格であれば405坪という広さであっても、ちょっとした貯金で購入できるため、売却のハードルは下がります。たとえば融資を受ける事がないため、銀行の担保価値の査定なども気にする必要がなく、条件が悪いなりに売却の可能性が出てくるといえます。

しかし、それでも相当長期間成約しませんでした。当時流行ったグランピング施設やオートキャンプ場を検討されているお客様もご案内しましたが、水道本管まで2kmというハードルは越えがたく、事業として成立しませんでした。

最終的に購入していただいたのは、完全に趣味でお買い上げいただいたお客様。こういうラッキーな出会いがなければ売却にはさらに時間がかかっていたと思います。こういう土地を売却するのは、とにかく延々広告を出し続けて出会いを待つという、気長な姿勢といえるでしょう。気長に待てば、やがて売れる可能性はあります。