旅館業を甘く見ていませんか?

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「そんな稼働率じゃ低すぎる」

そう言われたことが、何度かあります。弊社でお出しした簡易宿所の事業計画について、稼働率が低すぎるという指摘です。たとえば今帰仁村内の国道沿いの宿泊施設。売買でオーナーが変わるのに伴って、弊社にも管理の相談がありました。

弊社では、民泊新法のずいぶん前から「お客様に説明できるように」と、常時1〜2施設の運営を行っています。ですから、実際の稼働率を元に、かなりカタいところで利回りを計算しています。よほどのアドバンテージがある施設でなければ、年間平均の稼働率は40%程度でみておくべきだと考えています。

さて、冒頭で「そんな稼働率じゃ低すぎる」と言われた某施設はいま、どうなっているでしょうか? 実はうんと高い稼働率で収支予測を出した会社に管理を委託し、その結果立ち行かなくなりました。銀行への支払いもストップし、施設の売却を試みています。もちろん簡単には売れず、購入時より大幅に値段を下げた投げ売り状態。気の毒ではありますが、民泊管理会社や仲介不動産業者の話を鵜呑みにせず、しっかりとリサーチを行わなかったツケがまわってきているといえます。

なぜ稼働率を盛るのか?

弊社で予約管理(民泊管理)をお受けする件数には限りがあります。本業が不動産仲介であり、そのリサーチのために管理をお引き受けしているからです。そして、予約管理(民泊管理)で特に儲けようとしていないため、余裕を持って運営しつつ、本当の稼働率をお伝えしたうえで管理業務を受託しています。

しかし、民泊管理が専業の会社は、そこで儲ける必要があり「どうしても契約をとりたい」という心理が働きます。そこで、「ウチだったらこんなに稼働率をあげられますよ」という事業計画を出すのではないでしょうか?

でも考えてみてください。お金を出してリスクをとるのは、民泊管理会社ではなくオーナーです。ですから、オーナーは他人の数字を元にするのではなく、自分の頭でしっかりと考えないといけません。

弊社がお出しする収支予測の稼働率は、一貫して40%前後です。「そんな稼働率じゃ低すぎる」と言われたことが数回ありますが、不思議でならないのは「なぜその稼働率になるのか?」と尋ねられたことが一度もない点です。自分だったら絶対に尋ねるだろうと思いますし、私と同じく宿泊管理の仕組みや現状をリサーチしたいと思う人は、きっと尋ねるだろうと思うのです。

民泊ビジネスはオワコン?

民泊(という名称が一般的ですが、ここでは簡易宿所についてお話ししています)ビジネスはオワコン、という人もいます。しかし、それも表面的な理解だと思います。

実は民泊ビジネスで大儲けできた時代はなかったと思っています。もっとも、5年以上前、誰も「民泊」なんて言葉を口にしなかった時代に宿泊ビジネスを手がけたパイオニアの方々だけは、おそらくしっかりと儲けることができていたはずです。弊社のお客様でも、そういう方がいらっしゃいました。

そう考えると、民泊ビジネスは常に甘くない世界だったのです。少なくとも、相当な初期から民泊運営に携わってきて、そのように実感しています。

そして、常に甘くないけれど決してオワコンでもない、普通の市場だと考えています。「甘くない」という事を前提に事業計画を立てるなら、ビジネスとしてしっかり成立する余地は十分残されています。むしろインバウンドという、今の日本経済を牽引する力を利用できる点で、希望の持てるジャンルだと思っています。

あとは、事業計画次第です。