仲介手数料無料の罠

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ここ数ヶ月タイムス住宅新聞などにこんな広告が掲載されているのを目にします。

この広告、実は中途半端で意味がわかりにくく補足が必要な気がします。

ゼロ円になるカラクリ

売主仲介手数料が無料となる理由は単純です。「買主からのみ仲介手数料をもらっている」から売主は手数料がかからないのです。

すなわち、仲介料ゼロ円業者にとって、買主のみがお金を払う「お客」です。

では、お金を払わない売主は? それは「商品」。仲介料ゼロ円業者に売却を依頼した瞬間から、あなたはお客ではなく商品ということになります。

ここで考えないといけないのは、不動産売却は売主と買主の希望額が異なっている場合が多く、その場合価格を調整するということ。

もし私が仲介料ゼロ円業者だったら、お金を払うお客である買主を重視しますね。売主であるあなたは商品にすぎませんから、文句を言われない程度にうまくまとめて、買主さんを優遇するでしょう。だって、お金をいただいているお客様ですから。

また、価格以外にも契約書上さまざまな取り決めを行います。それらすべてに精通していればいいですが、よくわかっていない事項で買主有利に誘導されていたら? たとえば重い瑕疵担保責任を負わされていたり、融資が通る可能性が薄い買主と契約させられていたり(うっかり融資が通れば仲介料ゼロ円業者はラッキー)、その他不利な条件は多々考えられます。

正常な流通に乗らない

問題はそれだけではありません。

宅地建物取引業法により、仲介業者が専任媒介等で仲介依頼を受けた場合、不動産流通機構(レインズ)というデータベースに物件を登録することが義務づけられています。

レインズは全国の不動産業者が加盟している巨大データベースで、これにより広く売却不動産を告知する仕組みです。

しかし、ゼロ円業者はこのレインズに仲介物件を登録しません。「それ、宅建業法違反だろ!」と思うわけですが、とにかく登録しないんです。

というより仲介手数料ゼロ円だから登録できないのです。論理的に不可能なんです。でも、ゼロ円業者はこのことを顧客に隠して話しません。そしてレインズに登録されないような物件は売却に時間がかかるので、ゼロ円業者に頼んだ不動産は、なかなか売れないはずです。

結局「半年たっても売れないんで、値段を下げましょう」という提案をされるでしょう。

仲介手数料を100万円けちったがために、物件価格を200万円下げた……なんてことにならないよう、まともな仲介業者に任せた方がいいんじゃないですか? というのが、冒頭の広告の趣旨です。

冒頭の広告を出しているのは、不動産流通機構すなわちレインズ自身です。彼らがいうのだから間違いありません。ゼロ円業者は絶対レインズに載せてませんよ。

買い手はいるのか?

あと、おそらく仲介手数料ゼロ円でもいいから物件がほしいということは、物件が不足して困ってるんだと思うのです。お客様のために! というのなら、買主の仲介手数料も無料にすればいいじゃないですか? それをしないのは、お金は儲けたい。でも物件がない。だからゼロ円で募集してみよう。仲介手数料が入らないより、半額でもマシだし。

ということだと思います。論理的にはそれしか考えられません。

たとえばテレビで仲介手数料ゼロ円をうたっているキ○○ブは賃貸中心の業態で売買は強くないので、売物件が不足していたのでしょう。東○○組とかに至っては不動産仲介業をどれくらい真剣にやってるかさえ……。

我々はこういった会社と一緒に仕事をしたことがありません。ビッグ開発さんとか松樹さんとかは、普通にお客様を紹介したり、してもらったりするのですが……。仲介料ゼロ円業者は、他社と交流して広く物件を流通させる気がないのだと思います。というか、ないです。

そういう会社にゼロ円で物件を預ける……。

不安だと思います。