『老いる家 崩れる街』(講談社現代新書)の著者が改めて著した、住まいの終活にまつわる本。20年以上放置された家もめずらしくないという空き家問題をテーマに、どのようなエリアに空き家予備軍が多いかを明らかにします。
空き家予備軍とは、将来の大相続時代に問題となる可能性をはらむ、現時点で高齢者のみの世帯が住む住宅。意外なことに、空き家予備軍は都市部近郊に多く、空き家予備軍率ランキングでは、関東地方なら横浜市栄区や東京都品川区、関西地方は京都市中京区や神戸市須磨区が筆頭にあがっています。
負動産と化した住宅を相続するにあたり、相続人全員が相続放棄してしまうケースも増えているそうで、それにより管理されていない空き家が増加している点も問題です。現在は市町村など行政が対応する問題ですが、予算に限りがあるため、放置されている空き家が多く、問題が広がっているといえそうです。
そういった状況を踏まえて、著者はデトロイト市のランドバンクなど、海外の先進事例を紹介。空き家を救う支援についての提案をおこなっています。最後は、デトロイトの例にならって空き家トリアージを紹介し、巻末に「住まいの終活(エンディング)ノート」という付録を綴じ込んでいます。新書に付録がつくのはめずらしいのですが、この付録、なかなかよくできています。
この「住まいの終活ノート」を可能な限り埋めた上で(どうしても不明なら空けておいてもかまいません)我々不動産業者を訪ねていただければ、その日のうちに具体的なご提案ができるでしょう。売るべきか、貸すべきか? 売るとしたら概ねいくらぐらいか? そういったデータをすぐに出せるくらい、よくできた付録です。もちろん、相続について司法書士さん、弁護士さん、税理士さんを訪ねるときも、これを作っておくと効率よく打ち合わせができるはず。なかなかおすすめの一冊です。