最近同業者から名護市東海岸某所の広大な土地の評価を依頼されました。この広さですから、ホテル用地、リゾート用地としての評価になります。そして実はこんなケースでは、通常の価格査定ソフトは利用できません。なぜなら、査定ソフトは住宅地の査定を目的として作られているからで、そもそも999㎡を超える土地の評価ができません(これについてはソフトウエアによると思いますが、最も一般的と思われる不動産流通近代化センターの査定ソフトでは不可能です)。
というわけで、今回は住宅地ではなく広大なリゾート地を査定する場合にどういった点を見ていくのか解説します。いろいろ書いた上で、最後に大どんでん返しがある解説になりそうな予感がしていますが……。
今回の評価の具体的な内容
そもそもの依頼が「現況農振農用地なので農地としての評価と、農振除外と開発許可が得られた場合の評価を……」ということでした。農地の評価は宅地に比べると精密には行えません。そこで国土交通省不動産総合データベースのデータを利用し(県内データをすべてダウンロードしてデータベース化)概算価格を出しました。坪単価でいうと約4000円。この価格は名護市東海岸地区で、ほぼ同じ数字になります。沖縄本島北部の農地はだいたい3000円くらいから8000円くらいの評価になることが多いと思います。
では、リゾート地として建築可能な状態にできたら評価はどうなるでしょうか? 今度は西日本レインズの取引事例を利用して、取引事例比較法による概算価格を出してみました。坪単価約5万円。けっこう高いですね。
そこで念のため、近隣の基準値の公示価格を確認すると、こちらも坪約5万円(注1)。ほぼ国道沿いの土地ですが、思ったより高い! そこで、評価額は坪単価5万円、総額約4億円(8000坪)は妥当と結論付け、その結論に基づいた報告書を書きました。
プライベートビーチの付いた土地ではありあますが、本当にこんな価格で売れるのでしょうか?
実はデータだけでなく経験による相場観も求められます
そうなんです。ここまでデータに基づいた話をしてきましたが、せっかくデータに基づいて出した数字が妥当かどうかを判断するのは、最終的に経験。なんていうと「じゃぁ最初から経験とカンでいいんじゃないか」といわれそうですが……。
冒頭でも書いたように、実は今回の価格査定は同業者からの依頼で行いました。わざわざ不動産業者が他社に依頼したということは、弊社(沖縄かりゆし不動産)が沖縄本島北部のリゾート系の土地を多く扱っていることと、その業務の中で把握している相場観による判断が重要となってくることが理由です。
で、当社の意見ですが、もし建築可能な状態にできれば坪単価5万円……というのは、かなり妥当であると思われます。実は宜野座村漢那のビーチ付き土地でこれくらいの価格帯のものはありますし、広告の反響も順調なので、大幅値下げなしに成約可能だと判断を下しました。また、「プライベートビーチ付き」という条件は市場で大きく評価されていますから、そのあたりを加味した上での相場にはしっかり収まっていそうです。
という感じで、最後はデータじゃない部分で判断を下さないといけません。
せっかくがんばってデータを駆使した後に、そのデータに基づいた判断が当たっているのかを経験で判断する……。なんだかアナログで残念なのですが、沖縄本島北部の、とくに郊外の土地では避けられない事態なのです。
注1……基準値は普通の住宅がたっている小ぶりな土地なので、8000坪もの査定地と単純に比較するわけにはいかないのですが、ちょっと話をはしょっています。たとえば通常、公示価格だけをみて査定価格を判断するということはありません。