ただただ「仲介をとりたい」一心で、高い査定額を出す事例やその弊害については、以下のようなエントリーで説明しました。
今回は、まっとうな価格査定書をお出しして、そこからいかにして高く販売するかをご検討いただいた事例をご紹介します。それがベストな手順だと考えるからです。
県外からの相続案件
この案件では、良心的な営業をしやすい条件がそろっていました。
まず、遠方の同業者からの紹介であったこと。最初から当社(沖縄かりゆし不動産)を信頼して売却査定をご依頼いただきましたので、不動産価格査定とは何か? 査定額をどのようにとらえ、どうやってそれ以上の価格で売却するのかという説明を、しっかり聞いていただけました。
亡くなったご主人様の思い出の品が残るセカンドハウス。弊社では次のような手順で、相場のど真ん中の査定額をお出しし、それ以上の価格で売却する方法をご提案しました。
土地価格をどう考えるか
沖縄の不動産バブルが話題になるなか、今帰仁村の土地価格は意外とあがっておらず、普通の住宅地であれば坪単価4万円くらいがひとつの基準。土地が約100坪あったので、土地価格をおおむね400万円と考えることになります。
しかし、今帰仁村の土地価格に関する事例データはきちんと積み上がっていません。さらに建物価格と合計されることによって土地価格はあいまいになり、より高い価格であっても受け入れてもらえる可能性が高くなります。
そこで、査定額を400万円としつつ、売出し時には調整可能と考えました。
建物価格はどうなるか?
建物価格は、建築構造、床面積、新築年月日などの諸情報を入力して計算していきます。ここでは約1200万円の査定額がでました。
ただし、2019年現在の状況に合わせて補正が必要です。市場がバブル状態にあるからです。
弊社で今帰仁村内の戸建て物件の広告を集めて片っ端から独自に査定したところ、土地価格を差し引いた建物の価格は、本来の査定額より1.49倍高く売り出されていることがわかりました。そこで、上記の倍率を掛けて建物査定額を補正してみると、1788万円が妥当な売出し価格ということがわかりました。
売出し価格を決定する
売主様と上記の内容を検討し、さらに調整を加え、売出し価格を2300万円としました。これは土地価格にさらにプラスアルファ(112万円)を乗せている数字ですが、データ上「アリ」だと考えられる水準です。さらに、現在(2019年5月)の今帰仁村内の住宅売出し状況をみると、この価格帯の実需向け物件は極端に少なく、日々営業している実感としても「イケる」という感触です。
そこで、2300万円での売出しを決定。反響もよく、この価格での成約も十分期待できる滑り出しとなっています。
おさらい
価格査定においては、どうしてもデータを元に、根拠のある数字を出さなければいけません(宅地建物取引業法でも、根拠を示すことが義務づけられています)。
今回、その数字は1600万円程度。これが「過去の事例に基づいた査定額」ということになります。いわば、オフィシャルなデータによる相場の数字です。
それに対して、物件の特性(需給バランスが崩れている2000万円前後の一戸建て)であることや、地域の特性を加味して補正し、「今ならこれで」という数字を出しました。
結論としては700万円プラスの、2300万円での売出しとなります。
もちろん、物件が土地のみの場合には、こういった大幅アップは難しい場合が多いですし、市町村が違えばまた違った考え方になります。
だからこそ、①まずはまっとうな査定額をだし、②地域や現在の市場の状況に合わせた補正をする、という手順を踏まないと、正しい売出し価格を導き出すことができません。
意味のない高い査定額を出されても、売希望額を論理的には導き出せないわけです。