大変残念な事例をひとつ。買ってはいけない負動産を買ってしまい、やってはいけない方法で売却することを決められた一件です。本稿を読んでいる皆様はこれを他山の石とし、同じ轍を踏まれないよう祈念しております。
査定依頼から始まった
W様より弊社に届いた査定依頼。今帰仁村の某所ですが、地番を見た時点で「これは、おそらく……」という緊張感が走りました。今帰仁村の高台にある分譲別荘地はおすすめできるのですが、そこに隣接するエリアに多数の「水道が引けない土地」が存在するのです(注)。なぜなら、村営の水道本管まで数キロ離れており接続に莫大なコストがかかるからです。弊社ではこのような物件を、現在2件取り扱っていますが、なかなか苦戦中。
そして、役所調査や登記簿の調査を行ったところ、はたして水道が引けない土地でした。こうなると売却はきわめて困難ですが、W様としては「坪単価4万円で購入したので、4万円で売りたい」とのこと。実際にお会いして相談しながら、どうすべきかを探りました。
うかがってみると「私、この土地を〇〇さんから直接買ったんです」との事情があきらかに。〇〇さんとは、沖縄ならたいていの人が知っている有名な事業家です。しかし、ちょいちょい高い値段で人に土地を売ったりされている事も、漏れ聞いています。
高買いしたのか……。
あのあたり、〇〇さんが売却した単価は、通常坪あたり15000円くらいと聞いています(事業パートナーだった方から聞いているので堅い数字です)。Wさんは坪あたり4万円で購入しているわけですから、相当ふっかけられています。
これはもう、当社の売り上げや利益にかかわっていたら解決できない負動産。そこで、懇切丁寧に作戦をお伝えしました。
坪4万円で売り切るのはきわめて困難です。この場合専任媒介でお受けして「売れますよ」というのは責任感ゼロな対応といえます。ちょっとでも売却の可能性を高めるために、一般媒介にしておいて、得意ジャンルの違う3社ほどの会社に仲介を依頼すべき案件です。間口を広げてワンチャンスに賭けることになるでしょう。
上記のリンクにあるような、一般媒介必勝の法則もお伝えしました。そして最終的には価格を下げないと売却できない可能性が高いこともしっかりお伝えし、販売活動をスタートしました。
なんとか案内も続ける
弊社はオーシャンビュー物件、リゾート物件を得意としていますので多数お問い合わせをいただきます。その中で、水道がなくてもなんとかなる事業のお客様に、本件をご紹介する作戦としました。たとえば、大型バスを客室としたホテルを展開する海外の事業主様。あるいは観葉植物の生産販売をしながら観光施設を併設する事業のお客様(井戸水でいけるかも知れません)。
ところが、数ヶ月たったある日、W様より連絡がありました。
「申し訳ないけど、媒介契約を解消したいのですが」
正直なところ、勝つ見込みのない戦に挑み続けていたので、ちょっとホッとした面もあります。「わかりました。よい業者さんがみつかったんですね」
そう聞くと、内地系の普通のチェーン店の名前が……。
まぁ、仕方ないのかも知れません。しかし、その会社は普通の住宅販売、宅地販売がメインの業態です。水道が引けない土地を売れるタイプの会社では、ないと思うのです。いくら素人でも、そのチョイスはだめだと思います。
絶句していると、「今回は専属専任媒介でお願いしたんです」とややうれしそうな感じのご報告をいただきました。最悪です。
私は「そうですか。早く売れるといいですね」と電話を切りましたが、その後の虚無感はなかなかのものでした。
みなさん、よろしいでしょうか? 迷ったら一般媒介がいいのです。そして、一般媒介最強の法則を守る! これでだめなら、価格が間違っています。値下げしましょう。
大事なことなのでもう一回いいますが、一般媒介最強の法則を守ってください。
一般媒介は業者にとってメリットが薄く、普通お客様にすすめてきません。なので、お客様が主体的に一般媒介を選ぶ必要があります。
W様の敗因は、主体性なく〇〇さんに勧められた土地を買い、主体性なく市内のチェーン店がすすめてきた専属専任媒介を選んだことにあります。ちなみにそのチェーン店、媒介契約から2カ月ほどたった現在も、広告に写真さえ載せていません。
注……分譲別荘地(今帰仁ウエルネスビレッジヒルサイド)内には開発業者が水道を設置しているので、問題なく上水が供給されています。この水は村営水道の水を管理会社がポンプアップしており、しかも村営水道と同じ料金で提供。良心的ではありますが、エリア外に供給する余力はなく、そのために隣接エリアは水道が引けないのです。