「『物件売買ニュースレター』を読んで、お電話しているんですが」
事務所にそんな風に電話をいただいて、面談したお客様の土地について、お話を伺いました。兄弟数名で相続した土地を売却したいけれど……というお話です。
いまひとつ歯切れが悪いのは、賃貸アパート建築大手のT社さんの営業マンに「この土地には建築できない」と言われたことがあるからとか。
そこで、弊社でも物件調査を行うことになりました。
超概算システムで相場を確認
物件所在地は那覇市国場です。
国土交通省のデータを使用した超概算システムで坪単価を出してみると、国場の坪単価は353,700円。これは国交省が実際に取引した人にアンケートを送って集積しているデータを使った概算です。そのため、本当の取引価格に近い、と考えることもできます。しかし、親戚間の取引や競売による取得も含まれているため、どちらかというと実勢価格より少し低いという傾向があります。
ざっくり、30万円台後半から40万円弱くらい、とみて間違よさそうです。
道路がふさがれている!?
しかし、問題がありました。図のように道路との入口が他人地によってふさがれているのです。以前のエントリー「公道に接しない『無道路地』の査定額は?」で解説したように、道路に接していないと価格が非常に安くなってしまいます。
そこで、弊社の営業マンが粘り強く道路をふさいでいる土地の所有者と交渉し、道路として使わせてもらえることになりました。
よっしゃー! T社さんのぶつかった壁はこれで克服。めでたく一件落着……ではなく、もうひとつ問題があったのです。
位置指定道路にご注意!
位置指定道路とは、建築基準法上の道路のひとつ。法第42条1項5号に「これを築造しようとする者が特定行政庁からその位置の指定を受けたもの」と定められた道路です。この位置指定道路は那覇市内にけっこう存在しています。そして、この土地の前の道路も、位置指定道路だったのです。
位置指定道路として指定を受けるためにはいくつか条件がありますが、今回問題となったのは「幅員が4m以上」という規定でした。道路位置指定を受けるときにも4mの幅員が必要ですし、建物を建てる際にも現況が4m以上なければいけません。
ところが、図の部分に民家の壁がせり出してきており、現況で4m確保できていなかったのです。わずか20から30センチ足りないだけですが、こうなると建築は認められません(建築主事により判断が異なる場合があります)。
うーん、この民家どうすべき!?
この民家の壁がなぜ位置指定道路にせり出して作られているのか?
故意なのか知らずにそうなったのかはわかりませんが、この民家から奥の建物は、おかげで再建築不可に……。また、他にも空き地がありますが、それらの土地にも建築が認められません。
この民家が本来の自分の土地までバックしてくれないと問題は解決しませんが、その費用をだれが負担するのか? と考え始めると答えは出ません。
「いちばん悪いのは、このせり出している民家じゃないか」といえばその通りですが、「じゃーバックしましょうか?」と言ってくれるケースはまれです。
今回の査定地も、これからこの民家をどうするか? という大問題を解決していく必要があります。
で、先ほども書きましたが、この位置指定道路は結構たくさんあるのです。
位置指定道路に指定されるとプレートが付けられますから、おうちの前の道路が気になる方は探してみてください。もしくは那覇市役所(那覇市内の場合に限りますが)で調べることもできます。
道路の問題は奥が深いので、細かく調査してくれる不動産業者に尋ねてみるのもよいと思います。
<補足>
その後(2017年)同じく那覇市内の別の土地について、位置指定道路であっても建築する土地の前面で幅員4mを確保できていれば建築可能であるとの返答を得ました(話がずいぶん違ってきています)。このほかにも行政の見解が変わることはときどきあり、それもまた不動産の物件調査を難しくしています。