価格査定におけるセカンドオピニオンの必要性

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「うっかりしてたら、怖いなぁ。自分たちも気をつけないと……」

と、思わされた事例です。

ある日、豊見城市与根の大きな土地の査定依頼が来ました。某査定サイトからの案件です。
早速登記簿を取得すると、地目は畑でした。

既存宅地とは何か?

少しだけ前提知識をご説明しておきましょう。

都市計画区域内の市街化調整区域では、原則として住宅建築は認められません。

しかし、以前は既存宅地制度があり(平成13年に廃止)ました。これはその土地が市街化調整区域となった時点で宅地性を有していた土地(一定の条件があります)であれば、建築可能とする制度です(ちょっと乱暴に説明しています)。

沖縄県では、この制度が廃止されたのちも、同様の要件を満たす土地を救済する措置をとっています。

簡単に言うと、「沖縄県では、その土地が市街化調整区域になった時点で宅地性を有し、一定の条件を満たしていた土地であれば住宅を建てられる」ということになります(許可制です)。

不動産業者はこの措置も、俗称として「既存宅地制度」と呼んでいます。

現場に向かうと他社の看板アリ

さて、この土地の査定にあたって登記簿のほか、公図や地積併合図を取得。また、豊見城市役所の税務課で宅地課税されていたことの証明書を取得しました。

この証明書は、この土地が市街化調整区域になった時点で宅地として課税されていたことを証するものです。
すなわち、本査定地は”既存宅地”だったということになります。

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これらを調べたのち、豊見城市与根の現地に立つと、残念なことに他社さんの売地看板が……。他社物件(とくに専任物件)であれば、査定書をお出ししたり仲介の契約をいただくことは通常ご遠慮します。ちゃんとレインズに登録された専任物件であれば、法律上も扱うことはできません。

が……。

この土地の売地看板には「住宅建築はできません」とのコメントが……。
しかも価格が与根の宅地にしては妙に安いではありませんか。

知らなかったではすまされない

この土地を査定した他社さんの職員が、既存宅地制度を知らなかったということは考えられません。
ただ、地目が宅地でなければ既存宅地ではない……と思い込んでいたのでしょう。

不動産業者がかかわる法律や条例、制度は非常に幅広く、そのすべてに精通することは難しいかもしれません。確かに、細かい要件を確認しておかないと、「地目が宅地でなくても既存宅地に該当する」ということに気がつかないケースもありそうです。
でも、それによってお客様の土地価格を数百万円低く査定し、おまけに「住宅建築はできません」とうたうことによって相当な売却チャンスをムダにしているとすると……やはり問題です。

そこで、大変迷ったのですが、査定ご依頼のお客様には、セカンドオピニオンとして弊社の意見お伝えしました。

あくまでボランティアで「建築できる可能性がありますよ」とお知らせしたにとどまりますが、でもお知らせしないわけにはいかないですよね。

それと同時に、自分たちも本件を他山の石とし、「知らなかったではすまされない」ミスをしないよう、慎重な物件調査を心がけなければ、と改めて思いました。

参考ファイル

沖縄県開発審査会提案基準