どんな商売にもビジネスモデルがあり、儲けるための仕組みがあります。不動産一括査定の場合は、どうなっているのでしょうか?
現在さまざまな不動産一括査定サイトがありますが(乱立気味です)、そのほとんどは図のような仕組みで利益を上げています。
もしあなたが不動産売却を検討しており、一括査定サイトに個人情報を入力すると、その査定サイトは6社前後の不動産業者にあなたの個人情報を送信します。
各不動産会社は、1件あたり15000円前後の料金を払って、あなたの個人情報を買い取っています。つまり、あなたが入力した個人情報は6社前後の不動産会社に売られており、それにより一括査定サイトは9万円前後の収益をあげていることになります。
鳴り続ける営業電話
6社の不動産会社のうち、仲介(媒介)契約を勝ち取れるのは1社かもしれません。勝率約16.6%の狭き門をくぐるために、不動産会社はそれぞれしのぎを削って営業します。
某一括査定サイトが運営する営業ノウハウサイトの記事には、次のように書かれています。
最低20回、なるべく30回は電話をかけるようにしてください。それで電話がつながらなかった場合のみ、このお客様は何度電話しても出ない、という資格があるのです。
(某一括査定サイトの不動産業者向け情報ページより)
不動産会社がこの通りに営業しているなら、1社あたり20~30回の電話がかかってくることになります。全部で6社ありますから、かかってくる電話は120~180回という計算になります。
あなたの電話番号を入手するために、15000円ものお金を支払っているのですから、それはある意味当然のことといえるでしょう。一括査定サイトに入力してしまった時点で、「不動産屋の営業電話がしつこい」と文句をいう筋合いではなくなる……ともいえます。
それが、一括査定のビジネスモデルだからです。
その査定額は正しいか?
さて、6社のうちの1社に選ばれて、あなたと仲介(媒介)契約を締結したい業者はどうするでしょうか? 実は、多くの不動産会社が「実際より高い査定額を出す」という方法で顧客の歓心を買っているのです。
こんな図とともに「自宅が680万円も高く売れた!」的なキャッチコピーで煽っているサイトもありますよね。
残念ながらそのような査定額は簡単に操作できます。もちろんマジメにやれば正確な査定額が出せますが、そうであれば680万円もバラつくはずがありません。もっと僅差で並ぶはずです。
私たち不動産業者は似たような査定ソフトを使い、同じデータベース(不動産流通機構)を利用して査定しています。そのデータベースの取引事例にもバラつきはありますから、その中で中央値をとるか、ヘンに高い成約事例をとるかで、査定額が大幅にかわってくるのです。
いうまでもなく、中央値をとるのが正しい査定方法ですよ。
そして査定額よりどうしたら高く売却できるかを提案するのが、不動産屋の腕の見せ所なのです。
一括査定でよい不動産業者に巡り会える可能性もありますが、上記のような仕組みを知ってから利用しないと、満足のいく不動産売却にはならず、不満が募るかもしれません。