通常宅建業者が使用する契約書や重要事項説明書の書式は、国土交通省標準契約約款というものに準拠しています。そこには、必ず「租税・公課の帰属と分担」に関する定めが書かれています。
租税・公課とは、主に固定資産税のことを指しています。大都市圏では都市計画税も課税されることがありますが、沖縄での不動産取引では、通常固定資産税のみと考えてもよいでしょう。
また、上記の契約書では「不動産引き渡しの日の前日までの固定資産税を売主が負担し、引き渡し当日以降の固定資産税を買主が負担する」ものとあらかじめ定めています(これと違う取り決めをすることも可能ですが、ほとんどのケースではこの内容のままで契約を進めます)。
時折問題になるのが、負担金額を決めるための「起算日」。関西では4月1日を起算日として、3月31日までの1年間をひとつの区切りと考えるのが主流だそうです。たとえば12月1日に不動産を引き渡したとしたら、買主は12月から翌3月いっぱいまで(4か月分)の固定資産税を負担することになります。
一方、関西以外の地域では、1月1日を起算日とすることが多いようです。沖縄県も同じく、1月1日起算日の契約が主流です。この場合、1月1日から12月31日までの1年をひとつのサイクルと考えますから、12月1日に不動産を引き渡した場合、買主は12月ひと月分の固定資産税を負担すればよいことになります。
このように1月1日を起算日とするか、4月1日を起算日とするかで、固定資産税の負担が変わってきます。4月1日説をとれば買主が有利になり、4月1日説をとれば売主が有利になります。
そういうことなら「自分の不動産を売却するときは4月1日を起算日にしてほしい」と言いたくなりますが、沖縄での商習慣は1月1日が主流なので、簡単に4月1日起算日に変更するのは難しいと思われます。当社の過去5年の取引内容(仲介および自社物件売買)を確認しましたが、4月1日決算日の契約は1件のみでした。共同仲介先の不動産業者につとめる宅建士(当時は宅建主任者でしたが)が、関西で長く不動産業に従事してから沖縄に帰ってきた方で、関西流が身についていたのがその原因のようです。