高い査定がよい査定ではない理由

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「いちばんいい額の見積を出してくれた会社に、仲介を頼もうと思うんです」
海を見下ろすマンションの一室。オーナー様からそう聞いた時「これはマズイ」と思いました。
間違いが2点あります。

まず、不動産の価格査定は見積ではありません。
不動産査定は市場で売れる相場の価格を算出したものであり、出した数字が動かない「見積」とは根本的に違うものです。
たとえばリフォームや建築工事の見積であれば、その価格で確実に契約することができます。
ところが、査定額は上にも下にも変動するものであり、お客様と業者が一致協力して高額での売却を目指すための「目安」です。

高い査定書がいい査定書、ではない

次に、「いちばんいい額」の査定書が、最高の査定書ではないのです。
査定では本来、市場において一定期間内に成約するであろう、相場中の相場の価格を出すべきです。
そして「相場」ですから、本来なら誰が査定しても近い数字になるはずなのです。

ところが、やたらと高い査定額を出す業者が見受けられます。
お客様からしたら「お! ここはすごいね!」と思われるかも知れません。
しかし、高い査定額を出せば高く成約するなら、そんな簡単な仕事はありません。相場から乖離した高い査定額では、現実にはなかなか売却できないでしょう。

不動産の査定においては「正しい相場は?」という金額をまず算出し、「それより高く売る方法は?」というご提案を行うのが本筋です。
「とりあえず高い金額でも出しとくか!」というのは、お客様をだましているに等しい行為でしょう。

沖縄の特殊事情により、査定額が不正確な場合も?

ただし、沖縄の特殊な事情により、査定額がバラつく場合もあります。
特に郊外では、査定の基準となる「取引事例」が不足しています。理由はふたつあります。

・取引そのものが少ないので事例が積み重ねられていない
・宅建業法に違反するが、流通機構に登録しない業者が多い

上の「取引そのものが少ない」というのは大変わかりやすい説明です。
では、ふたつ目の理由「流通機構に登録しない業者が多い」とは、どういうことでしょうか?

宅地建物取引業法により、私たちは仲介依頼を受けた場合に、全国の不動産業者が接続するデータベース「不動産流通機構」に物件を登録しなければなりません(専任および専属専任媒介の場合)。法律で決まっているわけです。

流通機構はレインズとも呼ばれますが、この下のリンクからご確認いただけます。

西日本レインズ


わたしたちは、お客様から仲介(媒介)の依頼をいただくと必ず流通機構に登録し、登録証をお渡ししています。登録証にはお客様用のIDとパスワードが記入されており、ご自分の不動産が流通機構に登録されたことが確認できます。

内地では、流通機構に登録しないという状況は考えられないようですが、沖縄では普通に登録しない業者がたくさんあります。そのため、データベースに取引事例が残らず、正確な査定が出しにくいという状況になっています。

那覇市内や都市部ではデータが見つかりやすいのですが、郊外に行けばいくほど取引事例が少ないうえに、データが登録されていないという二重のハンデに見舞われます。

そんな場合でも正確な査定ができるように、各社の査定担当者はさまざまな方法で取引事例等を収集しています。

そのあたりのコツは、また改めてご紹介したいと思います。